本研究は大学におけるナレッジマネージメント(KM)の概念と機能のメカニズム、その期待すべき効果を明らかにするとともに、我が国の高等教育機関で必要とされる効果的情報運用のあり方と具体的メソッドを検討することを目的としている。この目的を達成するために、平成19年度は以下の活動を行い、成果を得た。 1)書面とインタビューによる調査 KMの歴史と発展の経緯を国内外の文献を入手し吟味するとともに、高等教育分野でのKMが最も発達している米国で詳細なるフィールド調査を行った。先端的大学6校を訪問するとともに、KMの研究を進める協会や研究機関4軒を訪問し、KMの具体的実施状況、課題、近年の動向、KMで必要とされるITツールなどに関する調査を行った。全訪問を通し、また、各組織で異なる部門にインタビューすることにより、KM運用の実態と課題が明らかになった。また、KMが大学内部の調査組織であるInstitutional Research部門で行われていることが多く、その目的、体制、活動において組織的対応が必要であることが明らかになった。 2)情報とデータ内容の確認 上記の調査と並行し、KMに必要な情報、すなわち、大学の諸活動を向上、改善するために収集、活用すべき情報とデータ内容を明らかにした。入手データには、a)学生に付随する情報・データ、b)大学の教育・研究体制と設備などに関する情報・データ、c)大学が行う調査結果、d)学外で行われた調査データなどが含まれる。 3)学内の情報、データの認識と整理 上記の情報・データ内容の確認に続いて、本学が所有する情報、データを整理する作業を行っている。作業内容には、a)情報・データの入力、b)情報のデータ化とデータの数値化、c)データ間の整合性の確保など、分析に必要なデータの加工が含まれる。これまでの調査で入手した知識と技術に基づき進められており、これら作業はKMの実践モデル作成に備えた具体的準備作業である。
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