本研究は、単位制度の実質化に焦点を当てて、学生の授業・授業外学習の問題に取り組むものであった。本研究で得られた主な成果をまとめると次のようになる。 第1に、単位制度の実質化に対して全国の大学はキャップ制などを導入したが、それで学生が授業外学習をするわけではなかった。キャップ制に、授業外学習時間増加に向けての具体的な取り組みが加えられて、学生の授業外学習の時間数は増加するのであった。 第2に、授業・授業外学習を通して知識・技能の習得に効果的であったのは、授業に適度に参加し、かつ授業外学習をしっかりおこなっている学習タイプであった。授業には長時間参加しても、授業外学習をしない学習タイプは、授業学習も授業外学習もしていない学習タイプと類似する否定的な教育効果を示していた。 第3に、当初は、単位制度をうまく機能させて学生が授業外学習をおこなっているその構造を、海外の大学・大学生調査によって明らかにすることを目的としたが、たとえば北米の大学生が授業外学習をおこなうのは、直接単位制度のゆえではないことが検討の過程で明らかとなり、この検討は頓挫した。それならば、学生の授業外学習時間を増加させる意味で単位制度の実質化に至っている国内の大学事例を検討しようとしたが、これも事例がほとんど見られない事実を確認して挫折した。しかし検討の過程で、こうした観点に前向きに取り組む弘前大学、信州大学、創価大学経済学部などのわずかの事例に出会い、学生を授業外学習させるような教員の教授学習観・授業デザインの組織的変革の重要性が示唆された。今後は、これらの観点のもと、単位制度の実質化、授業外学習の研究をおこなっていかねばならない。
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