我が国では治験以外の自主臨床研究(遺伝子・幹細胞を用いるものを除く)を規制当局に届け出る必要はなく、各研究機関の倫理審査委員会が倫理指針に基づく審査をしているのみであるが、前年度から「臨床研究の倫理指針に関する専門委員会」で本指針改正について継続審議され、改正案概要がまとめられた。平成20年度は研究分担者横出の指導の下に、研究代表者村山、連携研究者清水章・西村浩美らが、The DIA 44th annual meetingその他の学会活動を通じて、被験者の権利擁護について国内外の研究者と意見を交換し、その成果をも参考にして、同年6月に厚生労働省研究開発振興課宛に「臨床研究に関する倫理指針」改正案概要に関する政策提言を行った。この提言の一部が反映される形で7月31日に同指針が全部改正され、平成21年度から施行されている。また改正指針では、医薬品・医療機器を用いる介入研究には保険その他の補償責務が明記されたが、村山・西村は臨床研究のリスク算定について損害保険会社と綿密に意見交換を行い、臨床研究に係る損害保険の商品開発(平成21年1月)に貢献した。ただしこの補償保険の範囲は狭く、未だ被験者の権利擁護には不十分であり、今後も産学官連携による共同開発研究が必須である。また今年度から高度医療評価制度として、治験外であっても未承認/効能外の医薬品・医療機器を使用する臨床研究を保険医療と併用する道が開かれたが、村山、横出、清水らは、本制度の運用に関して倫理的観点その他から高度医療評価会議に政策提言を行った。さらに、臨床試験基盤の問題点を比較検討するために、京都大学・ソウル国立大学の臨床研究者への質問紙法を用いた、国際共同研究を遂行中である。
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