研究概要 |
研究代表者は昨年11月ワシントン州シアトルでワシントン大学生命倫理学教室Thomas McCormickの協力で行った「ワシントン州尊厳死法」に関する調査と、その後の法案成立と施行の状況について、詳細に検討解析し、その成果を平成21年10月1日に日本癌学会学術総会で「米国ワシントン州の尊厳死法The Death with Dignity Act in Washington State, USA」、及び11月15日、日本生命倫理学会第21回年次大会で「米国における終末期の医療選択:ワシントン州尊厳死法の成立の前後」と題し発表した。発表では法成立の前にワシントン大学の関係者に行ったインタヴューに基づき、ワシントン州の医療関係者の法案に対する意見、法の施行に伴い作成された様々な書式から推察される制度の概要について解説し、今年3月以降のワシントン州での施行の現状について報告した。オレゴン州の尊厳死法は施行10年を経て約400名が尊厳死を選択し、そのうち80%以上が癌患者であり、ホスピス医療を受けていたと報告されている。ワシントン州では初年度の2009年度に36名の尊厳死が報告されており、その患者特性にオレゴン州との顕著な差はない。両州の癌患者にとり尊厳死が終末期の重要な選択肢であるのは明らかである。ワシントン州の医療者には尊厳死に関わらない免責事項はあるものの、終末期患者の治療にあたる場合、不可避の過程であり何らかの形で患者からの要請に応ずることになる。日本で同様の法が成立する可能性は極めて低いが、終末期の選択肢の一形態として今後も注視し、その根底にある患者の要請とそれに対応する医療者の姿勢については学ぶべきものがあると考える。代表者は、これらをまとめて生命倫理学会の機関誌「生命倫理」に投稿した。
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