研究概要 |
本研究の目的は強力な白血球走化因子ロイコトリエンB4(LTB4)及び、脂質メデイエーター全体の産生の鍵を握るホスホリパーゼA2(PLA2)が痛覚過敏反応の病態形成にどのように関与するか解明することである。炎症により活性化された白血球が血管内から遊走し、痛覚過敏を起こす主体となり神経系に何らかの作用を起こしていると推測される。炎症性疼痛モデルでLTB4受容体1欠損マウス(BLTIKO)と野生型マウス(WT)を比較した。【方法】マウス右後足底に炎症惹起物質(CFA)又は生理食塩水を注入した。注入前とDay1,2,7にvon Frey test(機械的刺激に対する閾値測定)とHargreaves test(熱性疼痛過敏反応)で疼痛評価を行った。【結果】von Frey testではWT群Day7のCFA注入側、KOマウスのDay1,2,7のCFA注入側とDay7の非注入側で有意な閾値低下を認めた。Hargreaves testではWT群Day1,2のCFA注入側、KO群Day1,2のCFA注入側とDay2非注入側で潜時が有意に短縮した。BLTIKO群においてCFAによる機械的刺激閾値、熱性疼痛過敏反応とも抑制されなかった。【考察】CFA注入後の行動学的解析においてLTB4は痛覚過敏病態の主たる役割を担っていないことが推測された。逆にWT群よりKO群で炎症性疼痛反が明らかに認められたことから、KO群で内因性オピオイド放出が低下している可能性が示唆された。今後白血球由来の内因性オピオイド放出を両群で測定し解析していく。炎症反応の抑制により痛覚過敏反応も低下することが予測されたが、予測とは異なる結果が行動学的研究よりわかった。白血球活性化を抑制することが必ずしも痛覚過敏を抑制することにはならない可能性があり、今回の結果は炎症性疼痛の治療法選択の上で重要である。
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