研究概要 |
強力な白血球走化因子ロイコトリエンB4(LTB4)が炎症性痛覚過敏反応の病態形成にどのように関与するが研究した。炎症により活性化白血球が血管内から遊走し、痛覚過敏を起こす主体となり神経系に何らかの作用を起こしていると推測し、炎症性疼痛モデルでLTB4受容体1欠損マウス(BLT1KO)と野生型マウス(WT)を比較した。【方法】マウス足底に炎症惹起物質(CFA)又な生理食塩水を注入した。注入前とDay1,2,7にvon Frey test(機械的刺激に対する閾値測定)とHargreaves test(熱性疼痛過敏反応)で疼痛評価を行った。5%ホルマリンを同様に足底に注射し、注射足をなめる秒数を5分おきに測定し、自発痛の発現状況を比較した。【結果】von Frey test、HargreavestestともCFA注入側で非注入側に比し有意な閾値低下が認められ、野生型との差は見られなかった。ホルマリンテストでは、局所の痛覚過敏の指標となる注入前期では野生型と変わらなかったが、脊髄レベルでの痛覚過敏の指標となる注入後期において足をなめる時間がKO群で減少していた。【考察】CFA注入後の行動学的解析でLTB4は痛覚過敏病態の主たる役割を担っていないことが推測された。逆にWT群よりKO群で炎症性痔痛反が明らかに認められたことから、KO群で白血球由来の内因性オピォイド放出が低下している可能性が示唆された。炎症反応の抑制により痛覚過敏反応も低下することを予測したが、異なる結果が行動学的研究よりわかった。白血球活性化を抑制することが必ずしも痛覚過敏軽減にはならない可能性があり、炎症性疼痛の治療法選択の上で重要である。ホルマリンテストでは注入後期にKO群で自発痛が抑制され、脊髄レベルでの痛覚入力にBLT1が関与している可能性が示唆され、神経因生疼痛モデル実験での今後の成果が大変興味深い。
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