研究課題
R型Caチャネル欠損マウス(本マウスではモルヒネの鎮痛効果の増強、および鎮痛耐性獲得の減弱が認められる)中脳・延髄部を用いたcDNAマイクロアレイ解析より、モルヒネの鎮痛効果や鎮痛耐性獲得の調節に関連することが示唆される十数種類の遺伝子群を選別してきた。本年度はこれらのうち鎮痛耐性を形成する野生型マウスではmRNA発現量減少(野生型の62%)を示すが、欠損マウスではその減少が抑制されていたある遺伝子Bに着目し、野生型マウスにおいてモルヒネの鎮痛効果および鎮痛耐性形成との関連について検討した。この遺伝子産物の機能的阻害薬の腹腔内単回投与(0.01~1mg/kg)はモルヒネ急性鎮痛効果に影響を与えなかったが、脳室内単回投与ではある用量(1fmol)で急性鎮痛効果を抑制した。また腹腔内連日投与によって、鎮痛耐性形成を濃度依存的(0.01~1mg/kg)に促進した。そこで本阻害剤が、モルヒネによる小腸・大腸運動抑制作用(耐性を生じないので、便秘などの副作用となる)についてどのような影響を与えるかを検討した。charcoal mealテスト(小腸)およびbead expulsionテスト(大腸)で検討した結果、消化管運動抑制効果を有意に軽減することが両テストで観察された。現在摘出腸管標本を作製し、様々な薬物や電気刺激による腸管収縮反応に対するオピオイド類の持続的抑制効果を観察するするとともに、本阻害薬がオピオイドの腸管収縮抑制効果にどのような影響を与えるのか検討中である。以上の結果から、モルヒネ鎮痛耐性獲得の調節に中脳・延髄部における新たな情報伝達経路の関与が示唆されるとともに、本経路は腸管運動制御にも関与する可能性が示唆された(論文投稿中のため具体的な遺伝子名等の名称をふせています)。
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Journal of Pharmacological Sciences 110
ページ: 55-63
Molecular Pain 5
ページ: 74(1-14)
http://www.tmd.ac.jp/med/mphm/Yakuri.HTM