研究課題
骨折、捻挫、打撲などの運動器疾患の治療に際し、整形外科領域では、安静療法として局所のギプス固定がよく用いられる。このような固定(不動)は、患部の安静を保障する一方で、複合性局所疼痛症候群(CRPS)といった疼痛障害の発症寄与因子として注目されている。そこで、関節の長期不動が及ぼす神経系への影響を調査するために、独自の手関節不動モデル動物を5週間ギプス固定することで作成し、末梢から脊髄に至る神経系の変化について行動学的および免疫組織学的な検討を行ってきた。その結果、(1)モデル動物は、不動肢をADLにほとんど用いず、不動肢における手関節の拘縮、炎症所見、筋萎縮、骨密度の低下が認められた。(2)機械的アロディニア、熱性アロディニア、コールドアロディニアを示した。(3)脊髄後根神経節(DRG)において、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、カプサイシン受容体TRPV1、神経成長因子(NGF)、ASICといったといった疼痛関連分子の発現が変化した。(4)不動側の脊髄後角ニューロンにおいて、cFos発現の上昇およびグルタミン酸受容体のリン酸化が認められた。(5)脊髄後角深層において、CGRP発現の上昇および広作動域ニューロン(WDRニューロン)の活性化が認められた。これらのことは、このモデル動物がヒトにおけるCRPSの臨床所見を忠実に再現しており(上記(1)、(2))、その病態の基盤に末梢性感作(上記(3))と脊髄レベルにおける中枢性感作(上記(4)、(5))が存在することを示唆している。
すべて 2009
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (1件)
Neuroscience Letters 454
ページ: 97-100
ペインクリニック 30
ページ: 1239-1248
動物モデル実験からみるCRPS(真興貿易(株)医書出版部)
ページ: 115-125