研究課題
基盤研究(C)
運動器の診療に当たっては、局所の安静が必要とされ用いられる事が多いが、この際の関節の不動化は運動神経機能のみならず感覚神経系の機能にも影響を引き起こしていることをこれまでの研究で明らかにしてきている。本研究ではこのメカニズムの解明に取り組むにあたり、関節拘縮モデル動物の行動学的変化の詳細、末梢神経および脊髄における神経伝達物質やその受容体の分布、細胞内シグナル伝達物質の変化について調査を行ってきた。また、拘縮モデル動物に起きている行動学的変化が運動器のリハビリテーションアプローチによって改善するかどうかについても調査を行った。その結果、モデル動物においては行動学的分析により、患肢に機械的アロデニア、熱および冷アロデニアが存在することがわかった。また免疫組織学的検討では、後根神経節細胞レベルでルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)を含有する神経細胞の大きさが大きいサイズにシフトしていることが明らかに出来た。また、脊髄後角の深層においてCGRP陽性線維の増加、Microgriaの活性化およびC-Fosタンパク陽性細胞の増加などが観察された。このことは関節を5週間にわたって不動化することにより、末梢神経系の神経機能的な変化が引き起こされ、それが誘因となって脊髄の感作が引き起こされていることが示唆された。さらに、関節拘縮モデル動物でみられた行動学的異常は、強制水泳などの訓練で改善することは無かった。一方で健常側の前肢をギプス固定して使用できないようにすると患肢を動かす運動が観察された。本モデル動物はヒトでみられる複合性局所疼痛症候群患者の症状に類似した所見を示しており、今後は本モデルにおける脳への影響等についても踏み込んだ研究を推進したい。
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