現在、世界には「神経因性疼痛」に苦しむ患者が千数百万人も存在し、救われ難い痛みに苦しんでいる。我々の研究チームは、脊髄のミクログリア細胞に過剰発現するP2X4受容体が神経因性疼痛発症課程における重要な分子であることを提示している。前年度までの研究によりP2X4受容体遺伝子はその5'上流領域配列によってレチノイン酸受容体の標的遺伝子となる潜在的可能性を有しており、このメカニズムが初代培養ミクログリアにおいて有意なP2X4受容体発現増強を引き起こすことを明らかにした。そこで、神経因性疼痛モデル動物(Chungモデル)を作成し、その行動薬理学的検討を行ったところ、レチノイン酸経口投与によってアロディニア症状の発現が促進されることと、レチノイン酸受容体阻害薬処置によってアロディニア症状の発現が抑制されることを見出した。またこれらの結果は脊髄内で発現するP2X4タンパク質量の変化と相関していることを確認した。 これは神経因性疼痛発症時のP2X4受容体発現制御候補因子としてレチノイン酸とその受容体を介したメカニズムを新たに提唱するものである。
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