脊髄における神経型一酸化窒素日成酵素(nNOS)の活性化による一酸化窒素(NO)産生の増加が神経因性痙痛の維持に重要であることを明らかにしてきた。本研究では、脊髄での神経可塑性を誘導するNMDA受容体-NO経路の機能的、可逆的変化について、ノックアウトマウスや各種プロスタグランジン(PG)、オピオイド、グルタミン酸アナログを用いて検討した。nNOS活性という生化学的な変化をNADPHジアホラーゼ活性を用いた酵素組織化学により組織学的に可視化、定量化して、それらのNO産生を神経因性痺痛の客観的指標にすることを成功し、さらに、NO自身が逆行性メッセンジャーとしてシナプス前終末に働きnNOS活性にフィードバックをかけていることを明らかにした。 また、本研究では神経因性痙痛のin vitroモデルの作製を試みている。摘出脊髄標本を用いLTPなどの神経の可塑性を誘導し、その可塑性が神経因性痙痛モデルマウスにおける可塑性と同じであるか、nNOS活性を指標に検討中で、in vitroの神経因性痺痛モデルとして成り立つかも検討している。nNOS活性だけでなく、リアルタイムNOイメージング法により、実際に産生されるNOについても摘出脊髄全載標本で記録準備を進めている。そのNOを指標として、神経因性痺痛に関連する各種PG、オピオイド、グルタミン酸アナログの神経可塑性に対する効果を細胞および神経回路レベルで解析する。神経因性痺痛モデルマウスから摘出脊髄標本を作製し、すでに完成した神経可塑性を構成する神経回路への電気刺激に対するNO産生応答について検討準備をしている。さらに、NMDA受容体へのnNOSの移動による物理学的な調節の神経因性痙痛への関与の解析や、NMDA受容体やnNOSが活動する場である樹状突起スパイン形態変化とnNOS活性との関係の解析の予備実験を開始した。
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