研究概要 |
1.ラット後根神経節(DRG)由来のcDNAからNav1.1-1.9、Kv1.1-4.3迄のcRNA probeを合計21種類作成し、in situ hybridization法(ISHH)によりDRGニューロンや交感神経節後細胞、脊髄細胞におけるこれらのイオンチャネルの発現を包括的に調べた。 2.DRGニューロンにおけるNav発現については、neurofilament,IB4,TrkA,TrkC等のマーカーとの共存関係を調べ、これらチャネルの特徴的分布が解明できた。この結果は今後の電気生理学的研究に重要な指標となるデータとして評価され、現在Journal of Comparative Neurologyにてacceptの最終段階である。 3.交感神経節後ニューロンにおけるNav発現についても調べ、Nav1.7が主たるチャネルで、他にNav1.1-1.6が弱く発現し、軸索切断後、Nav1.3のみが増加するという予備的結果が得られており、現在その最終確認中である。臨床における交感神経ブロックの標的分子を解明するもので、ペインクリニック領域において重要なデータであると考えている。これについては近日中にショートペーパーにまとめる。 4.脊髄におけるNaV発現についても、NaV1.1-Nav1.7が層別に異なる分布をしており、神経切断後に増えるものと減るものがあるというデータが得られている。この研究はクモ膜下投与された局所麻酔薬がどのNavに効いているのかを解釈する上で、特に麻酔の臨床において重要な意味を持つと考えている。今後末梢組織炎症モデルでの変化を調べて論文にまとめる予定である。 5.DRGニューロンにおけるKv発現については、Nav2.1,4.2を除く全てが発現しており、大型ニューロンと小型ニューロンで発現が異なるという結果が得られている。数が多いKvの包括的発現比較はこれまで報告が無く、今後の電気生理学的研究に及ぼす影響は大きいと考えられる。今後は上記Nav同様、neurofilamentとIB4との共存を調べて論文にまとめる予定である。
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