以下の研究実績を得た。1.神経根損傷に伴うtPAの発現変化の詳細な検討ラットのL5神経根損傷モデルを作成し、脊髄後角でのtPA発現の経時的な変化を確認し、その変化を定量した結果、術後3日目をピークに7日目まで有意差を持って増加していた。2.tPAの発現細胞を明らかにする脊髄後角でのtPA発現と、各種のマーカー蛋白(ニューロン:Neu N、マイクログリア:Iba1、アストロサイト:GFAP)などとtPAを組み合わせた多重染色を行った結果、脊髄後角のアストロサイトがtPAを発現していることが明らかとなった。3.tPAのプロテアーゼ活性に関する検討ラット脊髄後根損傷による脊髄後角のプロテアーゼ活性の変化をIn situ Zymographyを用いて検討した。後根損傷後の脊髄表層において、プロテアーゼ活性の増加が確認され、tPA-STOPを投与するとその変化が消えることより、この脊髄後角におけるプロテアーゼ活性の増加はtPAの活性増加を介していることが明かとなった。4.tPA活性と疼痛の関連を検討疼痛行動を起こす脊髄根部分損傷モデルにおいてtPAの発現を検討した結果、アストロサイトでのtPA発現は14日後でも増加していた。後根の部分損傷モデルにおける足底刺激に対する過敏反応は、tPAの特異的阻害剤のtPA-STOPの髄腔内投与によって、有意に抑制されることがわかった。ただし、tPA-STOP投与を術時ではなく、術後10日目から投与しても過敏反応の改善は見られず、tPA活性はMechanical Allodyniaの誘導には関与しているが維持には関係ないことが明らかとなった。以上の結果は、英文雑誌GLIAに採択され、発表された。
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