研究概要 |
本年度は坐骨神経部分損傷よる神経因性疼痛モデルマウスを作製し,神経因性疼痛伝達における脳内コリン作動性神経の関与をコリン作動性神経の伝達物質アセチルコリンの受容体であるムスカリン受容体に注目して,その受容体サブタイプの詳細とGABA抑制性神経との関与につい検討し以下の成果を得た。さらに,神経因性疼痛発症に対する脊髄グリア細胞の役割についても検討した。 【成果、考察】 1.坐骨神経部分損傷よる神経因性疼痛由来の非侵害性機械的刺激に対する痛覚過敏(アロディニア)は,ムスカリン受容体作動薬の脳内投与により抑制された。その抑制効果は,脳内ムスカリンM_1受容体と脳内GABA抑制性神経のGABA_B受容体を介することが明らかとなった(第81回日本薬理学会年会発表)。これらの結果は,神経因性疹痛伝達にいて脳内コリン作動性神経は,GABA抑制性神経を介し疼痛伝達を抑制的に作用することを明らかにし,今後の本研究課題の発展に重要な方向性を与える。 2.坐骨神経部分損傷後,損傷側の脊髄でミクログリアおよびアストロサイトの著明な増加とアロディニアが認められた。これらの脊髄グリア細胞の増加とアロディニア発現は,損傷前のミクログリア活性抑制薬ミノサイクリン脊髄内投与で抑制された。これらの結果から,神経因性疼痛発症に脊髄ミクログリアおよびアストロサイトが,深く関与することが明らかとなった(第128年会日本薬学会発表)。これらの結果は,今後,疼痛伝達に対する脳内ミクログリアおよびアストロサイトの関与を解明する上で重要な情報を与える。
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