研究概要 |
タイ北部の工業団地で操業する日系企業のうち、モデル企業1社を対象に、従業員のHIV感染予防のための行動変容コミュニケーション戦略(Behavioral Change Communication Strategy, FHI 2002)を実施した。具体的には、これまで日系企業10社において参与観察やインタビューなどを用いて収集してきた民族誌的資料を使って、教育の対象者である従業員のHIV感染リスクの具体的なありようを理解した。そのうえで、従業員の社会的・文化的背景や、従業員のHIV/AIDSに対する認識をふまえたエイズ教育資料を作成し、その資料を用いて予防教育を行った。協力機関は、タイ国ラチャパーク大学であり、地域の健康教育に精通している大学講師2名が予防教育の計画と実施に参加した。予防教育の受講者および企業の管理職には、教育効果の評価のためのインタビュー調査とアンケート調査を、教育の後に行った。その結果、対象者の行動変容には、対象者の生活環境や文化規範を十分に考慮した予防教育が必要であり、教育資料には対象者になじみのある事例やイラストを用いることが効果的なことが証明された。予防教育の資料は、モデル企業以外の目系企業2社にも配布し、人事・社内教育担当者から、教育効果の高い資料としての評価を受けた。今後は、このようなHIV感染予防のための行動変容コミュニケーション戦略が、企業において広く普及されることが望まれている。
|