研究概要 |
タイ北部の工業団地で操業する日系企業のうち、エイズ教育を実施したモデル企業1社を含む企業3社の日本人・タイ人管理職と協働で、職場においてHIV/AIDS対策を推進するためのモデルを考えた。HIV/AIDS対策を継続するためには、企業の管理能力を持続的に高める必要があり、その一つは企業の社会的責任(CSR)を高めることであると言われている(ILOAIDS,2005)。しかし、日本では、HIV/AIDS対策をCSRに位置づけている企業はほとんどない。また、CSRにHIV/AIDS対策を位置づけようとすること自体が欧米企業に倣った戦略であり、従業員の健康管理体制がきちんと確立されている日系企業にはなじまない。これらのことをふまえて、本研究では、HIV/AIDS対策を安全衛生管理のなかで行えるようにすること、その安全衛生管理の方針を企業グループ全体においてある程度統一することができるかどうかについて、研究者と企業の担当者が協議した。その結果、次のことが導かれた。HIV/AIDS対策を含むということは、安全衛生管理の対象が、感染症やリプロダクティブヘルスにまで拡大するということである。そのような対策には、地域の保健対策との連携が不可欠である。これは、「企業による公衆衛生」と名付けてもよいものであり、地域に根ざしつつ、企業グループに統一した方針で健康管理を行うものとして、実行可能性と将来にわたる継続性が高い。
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