ベトナムの小児における成因不明肝炎の実態を調査した。臨床的に非B非C型肝炎と診断された急性肝炎26例および劇症肝炎7例の小児患者を対象とした。その結果、IgM-HAV抗体が急性肝炎26例中18例(69.2%)、劇症肝炎7例中1例(14.3%)で検出された。さらに、急性期の血清中を用いたPCR法にて、HAV RNAが急性肝炎5例(19.2%)、劇症肝炎2例(28.6%)で検出された。HAV RNA陽性を示した7例のうち、2例(28.6%)はIgM-HAV抗体が陰性であった。さらに、HAV RNA陽性7例のPCR産物を用いて、direct sequenceによりVP1領域の塩基配列を決定した後、分子系統樹を近隣結合法にて作成し、ゲノタイプ分類を行った。その結果、全ての分離株はゲノタイプIAに属した。 HAVベトナム株は、同一クラスターを形成し、近隣のタイやインド株とは異なった集団を形成した。この成績から、ベトナムではHAV感染が、非B非C型急性および劇症肝炎発症に深く関わっていることが示唆された。HAVベトナム株のゲノムを解析・報告したのは、本研究が初である。
|