研究課題/領域番号 |
19610004
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
礒崎 初仁 中央大学, 法学部, 教授 (40349212)
|
研究分担者 |
金井 利之 東京大学, (法学)政治学研究科(研究院), 教授 (40214423)
|
キーワード | 不祥事 / 組織的不祥事 / 個人的不祥事 / 厳罰化 / 情報公開 / 説明責任 / 権限集中 / 自治体官僚制 |
研究概要 |
平成19年度は、概ね過去10年間において表面化した不祥事事案について、新聞記事等のテータベースをとに抽出し、その類型化を試みた。建築偽装、裹金など「組織的不祥事」から、個人情報漏洩、汚職など職務関連の「個人的不祥事」、そして交通法規違反、性的犯罪など職務外の「個人的不祥事」に類型化できることを確認した。また、これに対する自治体の対応について、「もみ消し」・「個別処分」主義から「早期公表」と「厳罰化」の傾向にあることを確認した。 これを踏まえて平成20年度は、不祥事事案の原因・背景等について分析を行った。とくに「組織的不祥事」に着目して、汚職・不正献金問題(福島県、宮崎県等)、裹金問題(岐阜県加、宮崎県等)、職員等不正採用問題(大分県)など、いくつかの事例を選定して、(1)不祥事発生の原因と社会的背景、(2)当該事案に対する自治体の対応とその決定過程、(3)当該事案をきっかけとした不祥事対策の内容等について調査・分析を行った。 まず原因・背景としては、(1)首長・幹部職員への権限集中、(2)制度上の監視機能の形骸化、(3)組織内情報の囲い込み・秘密主義、(4)管理部門の職員の固定化・人脈の形成、(5)労組・マスコミ等とのなれ合い・身内意識の存在等を挙げることがてきる。次に、これに対する対応としては、(1)権限の分散・適正配分、(2)、情報の公開・共有化、(3)監視機能の強化、(4)不祥事防止条例の制定などの「制度化」、(5)懲戒等の厳格化、(6)上司等の監督責任の拡大などの「厳罰化」、(7)研修の強化、(8)リーフレット等による意識啓発の「意識化」などの対応がとられていることが確認できた。しかし、(1)人事制度・職員のインセンティブ構造、(2)自治体官僚制・セクショナリズム、(3)首長や幹部の権限とその仕組み、(4)労組・マスコミとの関係等については抜本的な改革が行われていないため、首長が交代したり不祥事の「余韻」が冷めると元にもどってしまう可能性があるし、「厳罰化」は職員のモラール・自発性を引き下げるおそれがある。 今後は、「個人的不祥事」についても同様の調査・分析を行うともに、不祥事防止に向けてどのような対策が必要か、とくに一時的な対応に終わらない組織・人事面の改革について検討する必要がある。また、近年、地方自治法、行政事件訴訟法、行政不服審査法(審議中)等の関連法規が改正されていることから、これがどのような影響を与えるか、法政策的な分析を行う必がある。
|