分権時代を迎えて、自治体の運営が地域社会にもたらす影響が大きくなる中で、自治体内部の秩序のあり方、とりわけ「不祥事」に対する対策・対処の実態を把握するとともに、新たな法令遵守体制のあり方について研究することが重要となっている。 従来の自治体実務において、こうした不祥事は不運・不幸な出来事と受けとめられ、もみ消しが図られるか、それが難しい場合は偶発的な事件・事故として関係者のみを処分し、組織から排除(懲戒免職)するだけで、組織的な再発防止策や組織管理の改革を行うことはまれであった。また、従来の学問研究においても、こうした不祥事の現状、背景、対策について、理論的・実証的に分析した研究はほとんどみられない。 しかし、情報公開と「法化」という地域社会の急速な変化の中で、こうした不祥事を偶発的な事件・事故として片づけるのではなく、自治体組織の「病理」として、あるいは自治体組織と社会一般のギャップとして捉えて、法令遵守体制の構築と組織マネジメントの改革を進める必要がある。また、こうした理解や対策を進めるためにも、理論的・実証的な研究が必要不可欠になっている。 この研究では、自治体の「不祥事」及び「不祥事対策」について包括的な調査を行うとともに、新たな法令遵守体制の構築に向けて分析・提言を行う。具体的には、(1)不祥事の類型化、(2)自治体内部の秩序(慣行と意識)、(3)不祥事対策の類型化、(4)不祥事対策の選択を決める要因分析、(5)法令遵守体制の設計、(6)法令遵守と地域社会の秩序・政治構造との関係、(7)法令遵守体制の効果(実効性)などを明らかにする。
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