研究課題
国連などで提唱されているHuman Development「人間開発」概念を、その理論的支柱となったアマルティア・センの「潜在能力論」に立ち返り、外部要件により構築される「人間」像ではなく、自発的に発達する「人間」像の視点を重視することの重要性を議論してきた。Human Developmentも「人間開発」としてではなく、より主体性に重点を置いた「人間発達」としてとらえなおされるべきことを検討した。一方、新自由主義的な政策が追及される中で「公共性」概念も再度検討に付す必要があった。市場が大きな影響力を持つ中で、国家、制度の「公的」役割も大きく変容を迫られ、これまで市民を統合していた秩序が新しく再編される過程を現在経験している。加えてグローバリゼーションという現象が従来秩序の根幹を揺るがしている。こうした問題を理論的に検討するのみならず、英国の制度改革と日本の格差社会を具体事例とし研究を進めた。特に日本で進行する格差の拡大、貧困層の増加の実態と背景については財政政策、産業政策、労働政策等多面的に検討を行った。そこではグローバル化を背景とした企業競争力の増進を目的とした政治構造の改編について理論的、また実証的に明らかにした。さらに社会を構成する「市民」のあり方が社会秩序に与える影響も大きい。そうした問題を特に移民、出稼ぎ労働者、中国残留孤児といった領域で検討を行ってきた。秩序再編の重要な要素である「市民社会」のあり方を巡っては、インドやフィリピンなどの途上国における状況をも含めて考察を試みた。
すべて 2007
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『法と民主主義』 418号
ページ: 66-69
『賃金と社会保障』 1445号
ページ: 4-18
『賃金と社会保障』 1446号
ページ: 54-63