研究分担者 |
冨田 信穂 常磐大学, 人間科学部, 教授 (60105062)
辰野 文理 国士館大学, 法学部, 准教授 (60285749)
平山 真里 白鴎大学, 法学部, 専任講師 (20406234)
鴨志田 康宏 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (60408979)
前野 育三 大阪経済法科大学, 法学部, 教授 (60079639)
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研究概要 |
犯罪被害者と加害者との関係は,近時のメディアの報道がしばしば一方的に被害者側に立って遺族の発言や心境に過度に同調し,被告人や弁護団に反発することが多いため,強い報復・処罰感情を視聴者や読者に植え付ける結果となっていると言われる。研究者の分析結果でも,しばしば被害者は加害者観を「人でない怪物」と見,加害者は被害者観を「怒りと憎悪をもった逆襲者」と見るのである。重大犯罪なら尚更である。報復の心情を無下に否定するものではないがが,本研究は,このような対話不能な相互対立,排除型関係秩序を越えて,腹蔵なきコミュニケーションに訴えて新関係秩序の再構築を目指す社会的,個人的方策を探求する。 コミュニケーションは自然には生まれない。担当官やNPOなどの第三者が調整し実現することになる。本研究では当の被害者と加害者とのあいだの対面対話ではなく一般的被害者と一般的加害者たち(交通違反者,少年院生,受刑者など種々あり)の間のコミュニケーションを高度化し,相互に他者認識の方向転換をもたらそうとする。方向転換とは怪物視,逆襲者視を転換することを意味し,よって各人の精神的安全保障につなげることを意味する。この種のコミュニケーション実践は英米ではパネル(米国では被害者衝撃度パネル<VIP>,英国では青少年犯罪者パネル〈YOP〉など)と呼ばれる。日本では被害者が講獅やリーダーとなって持たれる講演会,グループワークの類である。本年度は英米の文献資料を当たって日本語版実践手引きなどのデータベースを作成し,海外に実態調査して情報収集をした。少年院や刑務所を訪問してパネル活動をしている被害者から聞き取り調査を行った。その場合被害者の動機,意識は種々あることが分かり,今年度も引き続き調査する。
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