研究課題/領域番号 |
19610007
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研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
西村 春夫 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (60228228)
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研究分担者 |
細井 洋子 東洋大学, 社会学部, 教授 (80073633)
鴨志田 康弘 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (60408979)
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キーワード | 被害者視点を取り入れた教育 / 犯罪被害者調査 / 被害者-加害者関係 / 刑事司法による2次被害化 / 手続早期の調停活動 |
研究概要 |
本年度は前年度までの研究の補完的研究を行った。1)全国刑務所における「被害者視点を取り入れた教育」の現状と課題に関する調査を集計・分析した。「教育」のカリキュラムのなかに外部協力者の講話が組み込まれているが、そのなかで犯罪被害者または遺族の占める割合は3割弱であり、大きくはない。教育の実施上困難を感じている刑務所は9割に達するが、「被害者視点の取り入れ」について実績も蓄積もない現状では無理もない。2)現に矯正施設に出向いて講話活動をしているか、していないかを問わず、被害者に対して調査票を郵送し回答を分析した。a.加害者との関係の現状認識では、敵視、不信、拒絶を基調とするが、b.関係の将来的展望では、必ずしも一切の関係の断絶を望んでいない。3)6人の被害者あるいは被害者遺族個人に調査票(上記郵送調査の調査票と内容は同じ)を使用して慎重にインタビュー調査を行った。郵送調査とインタビュー調査、総じて、活動の目的・動機は、さらに被害者を出さないよう有意義な活動をしたい、自分の心の整理をしたい(結果としてそれが救いや回復につながる)、少年院生に被害者の思いを知ってもらう、少年の自立の相談・援助をしたい、など種々3である。また彼らは犯罪による直接の被害の他、時に刑事司法の諸機関の不適切な対応により被害を受け、それが悪感情として蓄積されていることが注目される。悪感情に対処し、精神的救いをもたらす社会的セーフティネットは整備されていないから社会的に引きこもり、地域との繋がりを失うケースがある。4)地方都市に開業する弁護士で、地域社会で検挙された加害少年に対する付添人活動をし、同時にその事件の被害者との金銭的、精神的な調停活動をしている人物にインタビュー調査を実施した。加害者を敵として「悪者退治こそ正義」というのなら兎も角、地域の人間を関係のなかに生活する者として捉えようとする現場的姿勢が、刑事司法手続の初期段階(留置、接見、送致)にも濃密にあり得ることが明らかになった。
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