研究概要 |
国際機関による法整備支援プロジェクトの特色を分析し,それが国内秩序と国際秩序を貫通するグローバルな規範形成ネットワークの構築にどのように寄与しているかという観点から分析を行った。対象機関としては,(1)国連システムから,(1)国連開発計画(UNDP)および(2)経済協力開発機構(OECD),(2)国際開発金融機関から,(3)世界銀行(WB)グループと(4)国際通貨基金(IMF),(3)地域の国際開発金融機関から,(5)アジア開発銀行(ADB),(6)ヨーロッパ復興開発銀行(EBRD),(7)アフリカ開発銀行(AfDB),(8)米州開発銀行(IDB),(4)地域統合レベルの機関として,(9)ヨーロッパ連合(EU)を取り上げた。全般的な特色として,国連系列の組織の活動は,民主化に相対的な力点を置き,選挙活動,立法支援,政策形成支援を重視していること,また,他の国際機関,政府,NGO,民間企業との連携ネットワークをアレンジする結節点としての役割を模索していることが明らかになった。また,国連事務総局直下に「法の支配」支援ユニットが設置され,規範形成ネットワークのさらなる強化に乗り出したことがちゅうもくされる。他方,国際金融機関は,市場化に相対的な力点を置き,基本的な方向性としてはワシントン・コンセンサスに沿った形での制度形成を目指している傾向が窺われる。もっとも,法分野間の順序づけやペースの調整に関しては方針のばらつきもみられる。さらに,地域機関は,政治的な理由から政府が介入しにくい分野において,より間接的な仕方で,ルール形成の調整機能を図っており,独自の存在意義を模索している。
|