研究概要 |
本年度は研究会を4回開催した。また,韓国,オランダ,カナダにおいて,犯罪者への社会的対応に関する視察調査を実施した。 1第1回の研究会では,次のように研究枠組みを策定した。(1)国内調査では地域での「安全安心まちづくり」のパラドックス,すなわち異質者を排除することによる秩序形成の脆弱さという視点をもちながら,防犯に関する地域調査を実施する。(2)国内外の調査を通じて,「犯罪者等困難を抱えた者のサポートに関心を共有する地域」を一つのモデルコンセプトとし,地域のソーシャルサポートネットワークの可能性や自然的秩序形成の意義を探る。また,このような秩序形成が成立する前提条件として,どのような刑事司法制度が望ましいのか考察する。第2回研究会では,各メンバーが本研究テーマに関連する領域での研究実績を報告し合った。第3回研究会では,平成17年に奈良市で生じた冤罪事件を考察することにより,自治体・刑事司法機関・住民の過剰な安全対応の危険性について考察した。第4回研究会では,各地の「生活安全条例」の制定と運用の実態及びその問題点について考察した。 2韓国では警察署,家庭裁判所,刑務所,保護観察所を視察し,刑事司法制度や同国の目指す秩序形成のあり方を視察研究した。 3オランダでは,保護観察所,元犯罪者の更生施設などを中心に犯罪者の地域統合策の実際を視察研究した。さらに,少数民族の社会統合策を調査し,異質者を社会に統合するための方策について研究した。 4カナダでは,性犯罪者の社会統合支援組織や医療保健関係者の活動,警察・検察等刑事司法機i関の対応及び刑務所や保護観察所での処遇プログラムを視察し,性犯罪者の更生と社会復帰について考察した。 5日本の「安心安全まちづくり」に関する住民組織やNPO関係者,犯罪者処遇機関・団体の関係者に,ヒヤリングを行った。
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