1.学習教材化に向けた博物館資料の整備と検討 これにあたり、まず博学連携の方向性を考えるために、博物館学習と学校教育の関係の史的経緯について調査・検討し、蓄積されてきた成果や過程で生じた問題点などを整理した。今後の方向性は、児童生徒の直接経験をもとにしながら、ICTの効果的活用が学習の幅を広げて質を高める鍵となることが導き出された。また、学習教材のデータベースを作成するために、下総国府跡出土遺物や関連の写真・図面資料をデジタルデータに変換する作業を実施した。 2.博物館地域学習に向けたe-ラーニングカリキュラムの開発 学習情報を発信し博物館利用の意欲を高める、展示を楽しく学び理解を深める、児童生徒の学習成果を博物館でも発表する、の3点を考慮したICT援用の博物館地域学習教材「下総国府を学ぼう」を作成し、これを地域学習の全体プロセスに組み込んだ学習プログラムを構築して実践した。その結果、ICT教材による博物館利用の動機づけは、生徒の問題意識を高め学芸員との対話学習が活発となり、館での実地学習を意欲的に取り組む点で効果がみとめられた。また、博物館の実地学習や事後の探究学習におけるICT教材の活用は、展示された実物資料の直接的理解を深めるだけでなく、その歴史的背景にまで視点が導かれて生徒が思考力を発揮するまでに到達し、博物館学習の幅と質を向上させることがわかった。ただし、ICTの活用は学芸員や教師が積極的に介在し、生徒との直接的コミュニケーションを交えることで効果は格段に高まった。すなわち、ICT教材だけに依存するのではなく、それを機能的に組み込んだ一連の学習プログラムの構築こそが必要なのである
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