研究課題
本研究の目的は、プレートの多重衝突帯が陸上にあらわれている南部フォッさマグナ地域の地質現象を教材として、学校や博物館で有効活用できる自然災害教育プログラムを開発することによって、新たな博物館活動を開拓することである。2007年度には、博物館が蓄積してきた野外観察と室内モデル実験などに加えて、新たな情報収集を行った。とくにモデル実験では、火山噴火や地層形成実験を博物館の講座や小中学校の授業および地方のイベントで試み、参加者がその内容をどのように把握するかの検証を行った。伊豆・小笠原弧北端部の伊豆地塊衝突域の変動地形判読に衛星画像データを利用し、デジタル情報をもとに視覚化のための地形模型を作製した。2008年には、新たに明らかにされた箱根火山の噴火史にもとづいて、旧地質モデルと比較研究できる新しい地質模型が作製され、博物館の特別展「箱根火山-いま証される噴火の歴史」で展示された。その機会に箱根火山噴火形成史を再現する実験を行い、2500人以上の小中高生が参加して箱根火山を形成した火山噴出物のテフロクロノロジーを疑似体験した。この成果は2009年5月の地球惑星科学連合大会で発表された。火山噴火実験には噴煙のようすをみせる水槽タイプと火山地形の形成をみせる廃油タイプとがあり、20数回におよぶ実験が学校や教育委員会で行われたが、いずれにおいても噴火現象の理解に有効であると生徒だけでなく教師からも高い評価を受けた。衝突境界の断層地形の判読に地形図と地形モデルおよび衛星画像が有効であるものの、農地や宅地化した平野部では変動地形は判然としないので、海岸から浅海域の微地形の調査が試みられた。一部で確認された水中土石流らしき堆積構造は衝突境界の断層運動に伴って形成された可能性があり、堆積実験との比較教材となる。このように博物館での教材開発は、学校教育に活用できることが確認された。
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神奈川県立博物館調査研究報告 (自然科学) 13号
ページ: 1-12
神奈川県立博物館調査研究報告(自然科学) 13号
ページ: 111-134
ページ: 211-218