研究実施計画に基づき、規定条件を検討するための紙媒体調査と聞き取り調査を行った。紙媒体調査の対象は、北海道開拓の村、滋賀県立近代美術館、九州国立博物館の3館であった。聞き取り調査は、神奈川県立博物館、平塚市美術館、九州国立博物館であった。調査対象については、都道府県立博物館に限定して行う計画であったが、未発表の先行研究において、県立博物館のボランティア活動に関するデータが利用可能となり、全国の県立博物館の傾向を把握することができることになった。そのため、定量的な調査よりも研究者らと交流活動があり、参与観察が可能な対象館を選定し、定性的な調査を行う方針とし、対象館を絞り込み調査を行うことにした。これまでの調査結果の概要から、ボランティアの主体的な活動の原動力になっているのは、自らの学びであり、何かお手伝いしたいというボランティアよりも目的をもって取り組んでいる活動が目立つ。また、結果の分析から、ボランティア側のもつ博物館の姿勢や博物館での活動環境の整備に関する意見に対して、それらの改善がなされていないままであることで関係性のバランスを崩していることがわかった。 これらの課題を解決する関係性構築ための規定条件を明らかにするために、自主活動型の博物館ボランティアのあり様を知ることと、具体的なボランティア運営事例から課題解決の対処方法を検討する目的で、ボランティア研究会を開催し、事例発表と討論会を行った。そこでは、博物館ボランティアの位置を明らかにするための文化ボランティアの事例、ボランティア運営で実績のある北海道開拓の村、課題解決の方策を模索する九州国立博物館、指定管理による民間企業が運営する千葉科学館、市民の専門性の視点からの事例を取り上げた。
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