本研究の目的は、博物館における博物館とボランティアの汎用性のある協働モデル構築方法の開発を目指すことであった。研究者は、滋賀県立琵琶湖博物館「はしかけ制度」において明らかにした"協働モデル"の条件を琵琶湖博物館以外の博物館のボランティア活動に照合し、汎用性を明らかにしたいと考えた。事例検討としては19年度研究対象であった九州国立博物館において、活動年限の問題とボランティアへの下請け問題についての課題解決を行った過程を追跡調査した。最終的に、博物館におけるボランティアとの協働の関係性を明らかにし、活動を促進する条件が付加された汎用性のある一般型協働モデルとして再構築したいと考えた。博物館側とボランティア側の意識とニーズについて調査を進め、ボランティア研究会を開催し、九州国立博物館、北海道開拓記念館、千葉市科学館の事例発表と検討会を行った結果をふまえて、20年度は、九州国立博物館を追跡調査し、解決を可能にした条件を明らかにした。 博物館は生涯学習振興の場として期待が高まり、学習者の主体的な自由な学びを促進するため学習プログラムを開発し、新たな博物館教育の理念を構築しようとしてきた。一方で、博物館におけるボランティア活動は、学芸業務補助のような博物館運営の補助的役割を担う活動が主であったが、ボランティア活動において、補助的ボランティアの段階から、主体的な学びを行う自主的活動ボランティアが活動する段階に移行している。今後ますますボランティアの主体的活動の場としての博物館の整備が求められ、このことが結果的に博物館とボランティアがともに成長発展する"協働モデル"再構築につながることを明らかにできたと考える。
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