昨年度は、「みらい」MR06-04航海でオホーツク海より採取された3本のピストンコア試料について、相対古地磁気変動を用いてコア間の精密対比を行い、場所による古環境変動の違いを明らかにした。しかし、ピストンコアでは表層部が採取時に物理的に乱されてしまうことが多く、約10万年以降の部分では良質のデータが得られなかった。これを補うため本年度は、調査船「よこすか」YK07-12航海において前述のピストンコアと同一地点で採取されたグラビティ・コアについて、古地磁気・岩石磁気測定を行った。磁化率を用いた対比により、ピストンコアでは最表層の堆積物が欠如していることと、表層で実際の深さよりコア長が長くなるオーバー・サンプリングが起きていることが明らかになった。MR06-04航海ピストン・コアとYK07-12航海グラビティ・コアから得られたデータを統合することにより、過去約50万年間の古地磁気強度変動曲線が完成した。 相対古地磁気強度変動を用いて、北半球高緯度と南半球高緯度の堆積物コアの精密年代対比を行うことにより、古環境変動イベントの南北差の検出など古気候変研究に資することを目的として、2009年2~3月に実施された調査船「みらい」MR08-06航海において、南東太平洋にて3本のピストンコア試料を採取した。予察的な物性測定の結果、チリ海溝に近いサイトのコアは約100万年の古地磁気変動を記録していて、北半球コアとの古地磁気強度を用いた精密年代対比が可能と考えられる。
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