潮汐以外の短時間スケールの海洋表層の現象として「晴天時の日射加熱による昇温」及び「気象擾乱通過に伴う鉛直混合による水温やクロロフィル濃度等の変化」が挙げられる。本研究は亜熱帯〜中緯度の海域を対象に、これらの短周期海洋変動が大気場に与える影響を明らかにすることを目的とする。本年度は、このような短時間スケールの海洋表層の変動現象をより正確に数値モデルで再現できるように海面境界部分のスキームの改良を行った。具体的には、海面から数m深のごく浅いところに形成される日水温躍層の形成を表現できるスキームのプログラムを作成し、これを海洋モデルに組み入れた。これにより、鉛直解像度の比較的粗い従来の海洋モデルでも浅い日水温躍層の形成を表現できるようになった。このスキームを組み入れた大気海洋結合モデルを用いて、2004年の梅雨期を対象に東シナ海海域における降水の日変化に対する海面水温日変化の影響を調査する簡単なモデル実験を行った。レーダーアメダスによる観測では九州地方の降水は午前と午後にピークを持つが、海面水温の日変化を考慮しない場合にはモデルの降水は午後にしかピークを持たなかった。これに対し、日変化を考慮した場合には午前にもピークが現れた。この結果は研究分担者と共同で日本気象学会において発表した。また、海面水温や海色等の衛星観測データを収集・解析し、5日程度の短い期間で発生する急激な変動現象の検出を行った。5日間で3℃を超える急激な海面水温低下現象は黄海、日本海、オホーツク海、本州東方の混合水域、及び沖縄南方の海域で発生する頻度が高い。これは主に気象擾乱の通過に伴って起こっており、クロロフィルa濃度の大きな変化を伴うこともあることが分かった。
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