コンテンツが、「制作」、「流通」、「消費」の過程で循環的に繰り返し利用されるコンテンツ循環環境において、実処理に求められる永続性と、それに伴った権利の無矛盾性を保証できる権利処理を自動的に実現できる手法を明かにすることを通し、コンテンツの二次流通を促進する「権利継承技術」という新しい概念とその有効性を明らかにすることが本研究の目的である。平成19年度では、権利処理における安全性と無矛盾性の確立と、コンテンツの権利処理履歴と改版履歴管理手法の確立について主として研究を行った。前者の課題においては、「権利許諾処理」、「利用管理処理」、「権利継承処理」機能を備えた映像編集システムを試作し、コンテンツに対する元の権利者の意図が権利許諾として一次コンテンツから二次コンテンツへと継承され、永続的でかつ無矛盾に遵守されることを実験を繰り返すことで検証を行った。試作した映像編集システムは、映像編集に必要となる実用的な機能を-通り備えたものであり、このシステムによる検証を行ったことで、実処理へ適用可能であることが明かになったと考える。後者の課題においては、先に述べた映像編集システムにおいて、権利許諾処理情報、利用許諾情報、利用情報、制作・編集情報、継承許諾処理情報、権利継承情報に関する履歴管理機能を作り込み、同様に、実験を繰り返すことで、迅速かつ無矛盾な記録・更新・参照・削除が行えることを検証した。以上の研究成果は、学会発表によって公表している。今後の課題としては、許諾コード等の新しい実指向の国際標準方式との協調的利用方法などを検討していく必要があると考えられる。なお、平成20年度の研究課題であるコンテンツ構成情報記述手法の確立についても平成19年度では検討を開始し、基本的な考え方について学会発表を行った。
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