コンテンツ循環環境における永続的かつ無矛盾な自動権利継承処理手法を明らかにすることを通し、コンテンツの二次流通を促進する「権利継承技術」という新しい概念の明確化とその有効性を検証することが本研究の目的である。本年度は研究の最終年度として、(1)コンテンツ利用条件記述手法と、(2)コンテンツ構成情報記述手法に焦点を当てて検討を行った。前者に関しては、国際標準規格であるISO/IEC21000-5(Rights Expression Language)を基に語彙の拡張を行い、実用的な権利記述語彙を定めた。語彙制定に当たっては、網羅的で典型的な編集作業シナリオを整理し、更に、広く使われている幾つかの映像編集システムの編集コマンドを分析することにより、様々なの要求条件を満たすよう検討した。後者に関しては、ISO/IEC15938(MPEG-7)を基に、コンテンツ中の特定の領域やオブジェクト、映像や音楽、テキスト等の複雑な表現形式が組み合わされたコンテンツ構成状態を考慮し、付随する権利情報を記述する方式を検討した。この方式は、各種の編集操作や視聴条件記述は、二次利用され編集されたコンテンツであっても、編集の結果が権利記述に影響を及ぼさないよう設計し、その有効性や問題点等について整理を行った。以上の検討の結果を、前年度に作成した映像編集システムに統合して検証システムを構築し、システム全体としての評価を行った。本研究を通し、永続的で無矛盾な権利継承記述を実現する一つの手法は明らかになったと考えるが、一方で、コンテンツの元の構造記述方式や符号化方式が権利記述の粒度や記述の詳細さに影響を与えることも分かった。今後の課題としては、コンテンツの構造情報や符号化情報と、権利記述や権利継承記述の関係をより一層明らかにし、それを利用した合理的な記述形式を検討する必要がある。
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