研究概要 |
光合成光化学系反応中心を構成する機能分子は、光合成明反応において、電荷分離と引き続いて起こる電子伝達に関与し、高効率な光→電子エネルギー変換を行う。これら機能分子群のレドックス電位は、高効率を支える要因として重要な物理化学的パラメータであるが、光化学系II一次電子供与体P680を始めとする多くのものについて、計測されていない、あるいは、研究者によってバラツキがある、など詳細が明らかになっていない。そこで、我々は分光電気化学的手法を駆使することで、機能分子群のレドックス特性について明らかにすることを目的として研究を進めている。 本年度は、光化学系IIに焦点を絞り、電位領域が比較的測定しやすいが、その機能が不明であるシトクロムb559をまず測定対象とし、次に本命であるP680の測定条件の確立を図ることとした。シトクロムb559は、これまで多くの測定例があるものの、酸化還元種であるヘム鉄に配位している2つのヒスチジン残基のうち、1つしかレドックス反応に関与していないとされてきた。しかし近年のX線結晶構造解析の結果からも指摘されることであるが、そのようなことは考え難く、またこれまでそのような結論に至ってきたのは、測定に用いられてきた滴定法による測定誤差がネックであるといえた。そこで、分光電機科学的手法の適用により、誤差±2mVの精度で精密に計測したところ、そのpH依存性から、明らかに2つのヒスチジン残基がレドックス反応に関与していることを見出した(T.Shibamoto et al.,FEBS Lett.,582,1490-1494(2008))。P680については、高電位領域の分光電気化学測定を可能とするダイヤモンド網電極を用い、電子メディエーターの合成などによりレドックス電位の測定条件の確立を計ってきたが、周縁クロロフィルの不可逆酸化などにより計測には至っていない。
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