日本人色覚異常例をさらに解析し、累計629例中70例が正常遺伝子型(11%)であり、本研究の対象である「正常(赤-緑)の遺伝子アレーを持つ先天色覚異常」が10%以上の高頻度で存在することを再確認できた。 すでに正常色覚日本人において、視物質遺伝子イントロン内に新規な多型を15か所に見出し、また、イントロンにもエキソンと同じように赤型と緑型とがあることを見出していた。今回は、これらの知見が他の人種に適用できるかどうかを検討した。その結果、新規多型15か所の内14か所では、欧米人やアフリカンにおいても多型のあることが分かった。イントロンの赤型と緑型に関しては、15か所中14か所については欧米人でも確認できた。しかし、アフリカンでは、7か所で確認できたのみであり、アフリカンの視物質遺伝子は多型性に富むことが判明した。 正常遺伝子型の1型色覚6例中5例に、あるエキソン3の多型が集中していることを見出した。この多型は、これまで報告された2000以上の視物質遺伝子中、この5例を含んでわずか24例でしか見出されていないという低頻度である。この多型が当該L遺伝子の非発現(あるいは低発現)に関連している可能性を現在検討中である。 正常遺伝子型の2型色覚のうち、-71Cを持っていた10例について、緑遺伝子プロモーターを-888までシーケンシングしたが、-71C以外の変異は見いだせなかった。 後続遺伝子プロモーターの-21はGではなくAであることを示した。また、イントロンの変異の意義を明らかにするためのスプライシングの解析系を確立した。
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