研究課題
クロロフィルdを主要色素としてもつ、シアノバクテリアAcaryochloris marinaはその吸収帯がクロロフィルaと比較して約100mV低く、酸化還元電位の制御において非常に興味深い生物である。我々は、この生物の光化学系Iを単離精製し、その反応中心P740がクロロフィルdの二量体であることをFITRおよび酸化還元スペクトルより決定し、その電位はクロロフィルa型の光化学系Iと変わらないことを報告した。これは、酸化還元電位の調節が還元側で制御されていることを意味し、昨年度に報告したAcaryochloris marinaの光化学IIにおける電位調節と一致していた。このことから、光化学系の酸化還元電位調節において、変化させてもよい還元側と変化してはいけない酸化側が存在することが明らかとなり、この結果は、光化学系の基本的原理を構築するものである。また、クロロフィルをモノビニル型からジビニル型に変化させた、シアノバクテリアSynechocystis sp.PCC6803から光化学系IIを単離精製し、その性質を調べた結果、ジビニル型のクロロフィルをもつ光化学系IIはアクセプター側の光阻害を受けやすいことを明らかにした。これは、ジビニル形成による構造変化が、クロロフィル三重項形成の電子状態および電位に変化を与えるためだと考えられ、分子理論計算の結果から一重項と三重項の間のエネルギーギャップが小さいことを示し、実験結果を相補するデータが得られた。この研究は、光合成の効率良い電子伝達の原理を考える上で、重要な情報となり得る。
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