研究概要 |
生理活性分子を連結した光増感剤はその光化学を変化させずに、その光毒性を向上させることができる。我々は生理活性分子による光毒性の増幅作用機序の解明を最終目的としている。その目的のために本研究課題では生理活性分子を容易にかつ系統的に連結できる光増感剤の合成経路の開発を行った。光増感部位としてフッ素ポルフィリン誘導体を用い、そのペンタフルオロフェニル基へのチオラートアニオンによる求核置換反応やアゾメチンイリドによる1,3-双極子反応を利用して、生理活性分子を連結した光増感剤の合成を試みた。 1.チオラートアニオンによる求核置換反応の検討…チオラートアニオン源としてシステアミンと2-メルカプトエタノールを用いてフッ素ポルフィリンとの反応を試みたが、いづれも反応が進行しなかった。しかし、フッ素ポルフィリン白金錯体と2-メルカプトエタノールの反応は室温下でも進行することが分かった。また生成物とアルギニンとの連結を行い、アミノ酸連結光増感剤の合成に成功した。 2.アゾメチンイリドによる1,3-双極子付加反応の検討…N一置換グリシンとしてN-(4-メトキシカルボニル)ベンジルグリシンメチルエステルを新たに合成した。これとフッ素ポルフィリンとの反応をトルエン中、パラホルムアルデヒド存在下、130℃で行った。反応混合物の電子吸収スペクトルからクロリン環の生成が確認された。この分子はクロリン環のCs対称面上にカルボキシル基を有するため生理活性分子のようなキラルな分子を連結しても立体異性を生じないと期待される。
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