1.好熱性細菌Thermus thermophilus HB27のLitR蛋白の機能と構造解析コバラミン生合成遺伝子群破壊株を薬剤マーカーの挿入により作製した。本破壊株は明・暗の両条件下でカロテノイド生産を示し、LitRによる転写制御が解除されていることが予想された。これらの結果を支持するように、大腸菌を宿主として調製した組み換えLitRはコバラミンに特徴的吸収波長を示したが、コバラミン結合ドメインを欠失したLitR蛋白はこの吸収波長を示さなかった。試験管内転写実験を用いてLitRの機能を調べた結果、LitR蛋白はRNAポリメラーゼによる転写開始を阻害するリプレッサーとして機能することが判明した。これらの結果から、LitR蛋白はコバラミンをリガンドとして必要とし、本蛋白のリプレッサー活性はコバラミンを介して吸収した青色光によって制御されることが示唆された。 2.Pseudomonas putida KT2440のLitR青色光によって誘導される遺伝子群の特定を目的とタイリングアレイ(アフィメトリックス社)解析を行った結果、未知生合成遺伝子クラスター、葉酸生合成遺伝子、走化性の受容体として機能するMCP遺伝子、フェニル酢酸分解遺伝子クラスターを含む約50の遺伝子群が青色光によって誘導されることが判明した。これら遺伝子群の青色光による誘導はこれまでに報告がなく、本応答は新規な環境応答現象であると考えられた。 3.光に依存した表現形質の探索土壌を単離源とした探索の結果、多数の菌株が光に応答して黄色色素を生産することを見い出した。16SrRNA配列解析からこれまでに光応答性の報告が殆どないBacillus属及びPseudomonas属細菌がその大半を占めていた。この中でBacillus megateriumが生産する黄色色素は極めて高極性であり、新規性の高いカロテノイドであると推測された。これらに加えてDGGE法を用いた分子生態学的解析により土壌中には多くの青色光依存的な生育を示す細菌の存在が示唆された。
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