研究概要 |
本研究の目的は,幾何的退化を解消する従来の記号摂動法が望ましくない副作用をもたらすことを反省し,除きたい退化だけを選択的に解消できる新しい摂動法を開発することである.本年度は,3次元ドロネーメッシュ生成問題を取り上げ,従来の摂動では体積0の四面体が生じるという副作用の防止法を開発した.ここで着目する副作用は,入力点の座標に摂動を施すために生じるものなので,これを防止するためには点の座標ではなく,別のデータに摂動を施さなければならない.そのためには,問題自体を摂動させる以外にないという結論に達し,3次元ドロネー図が,3次元ボロノイ図の双対図形として得られることに注目して,対応するボロノイ図の一般化技術を利用することにした.その結果,(1)3次元球ボロノイ図作成問題において球の半径に摂動を施す方法,(2)3次元ラゲールボロノイ図の加法重みに摂動を施す方法,(3)4次元凸包の点の第4座標へ摂動を施す方法のいずれを用いても,目的の選択的摂動が達成できることを証明した.次にこれら三つの方法の特質を比較し,4次元凸包に摂動を施すのが,もっとも汎用性が高くて得策であるという結論に達した.これによって,副作用が生じる心配なくドロネーメッシュを効率的に構成できるようになった.この結果は,一つの幾何問題に対する摂動の副作用を防止するという個別技術であるが,入力データではなくて問題自身に摂動を施すという考え方は新しくて強力なものであり,本研究の最終目的へ向かっての第二歩が踏み出せたと考えている.
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