研究概要 |
本研究では,繁華街やターミナル,モールなどを往来する多数の歩行者群の位置推定や行動履歴収集のための新しい位置推定方式を考案することを目的とする.一般に,モバイルセンサーの位置推定手法としては,複数シードからの電波強度の大小や同期データの到着時間差を利用したレンジベースの位置推定手法と,シードからの電波の受信の有無やホップ数などから位置推定を行うレンジフリーの位置推定手法がある.本研究ではレンジフリーの位置推定手法に,隣接モバイルセンサー群の推定位置と移動方向・速度情報を併用した位置推定手法を考案した.提案手法の性能を評価するため,モバイルセンサー間の通信はZigBeeなど近距離無線通信(無線半径30m程度)を想定し,位置情報を発信するシードを100m程度毎(交差点毎程度)に配置した環境で多数のモバイルセンサーを保持する歩行者が往来する状況を想定したシミュレーションを行った.評価結果より,各モバイルセンサーの位置推定誤差が10m以下(無線範囲の1/3以下)となり,提案手法により高精度な位置推定が可能であることが分かった. さらに,実環境における性能を評価するため,考案した位置推定アルゴリズムをZigBee無線通信機能を持った小型センサー(MOTE)上に実装し,実際に位置情報を発するシードを建物などに配置し,複数のモバイルセンサーで相互に情報交換しながら位置推定を行う実装実験を行い,その精度や位置推定に要する時間などの基本性能を計測した.実環境における実験結果より,提案手法は交差点毎程度の間隔で位置シードを配置した環境において,各歩行者が道路脇のどの店を訪問したか,などが特定できる程度の高い精度を達成できることが分かった.このことから,提案手法を利用することで,各歩行者の嗜好に応じたショップ情報の配信や,通学路での児童の行動履歴の蓄積などが可能になることを確認した.
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