江戸時代、透視図法が伝来したにも関わらず、浮世絵は透視図法に従わずに描かれた。本研究では透視図法で描かれていない浮世絵の構図を、透視図法を原理とする3DCGで再現する構図法の構築を行った。具体的にはまず、浮世絵の構図の透視図に対するずれを定量的に分析し、特徴を明らかにした。その特徴とは、透視図では平行な直線が一点で交わるように描かれるが、浮世絵の構図では左側面の平行線は左に、右側面の平行線は右に、離れて収束することである。次にその特徴を、3DCGによって再現する方法を構築した。その方法とは、まず透視図を3次元の直方体に復元し、次に直方体の左右側面を回転させる。最後にできた立体を、透視投影させると浮世絵の特徴を持つ構図を生成できる。さらに、透視図を浮世絵の構図へ自動的に変換する3DCGプログラムの作成も行った。プログラムをアニメーションに応用させるためには、次のような課題が残っている。変換部分の指定や、できた溝の補完などに手間がかかること。また、まだ斜面のみしか返還できないことがある。 浮世絵の構図は、1860年代のジャポニズムでは西洋の作家に影響を与えた。また、戦後発展し、世界的評価を受ける日本のセルアニメーションにおいても同様の構図が多くみられる。プログラムの完成によって、この構図法が実用化し、日本独自の表現手法がスタジオにおける3DCGアニメーション制作で活かされれば、国際競争力を持つ日本のアニメーションの産業の維持と発展に貢献することになる。
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