研究概要 |
言語処理の高度化に向けて,文書中の語句に基づく言語推論により複数文の意味を求めるための研究を進めた.ここで複数文というのは,1つの文の情報だけでは伝える情報が不完全となる文の集合を指す.本研究が対象とするのは,文の意味を1文単位に論理・形式表現しても,それらを並べただけでは,複数文の適切な論理・形式表現となるとは限らない場合である.複数文が参照表現により関連付けられるとき,参照表現を単純に論理・形式表現しただけでは,論理・形式表現上は関連が付かない.本研究は,特に国民年金法の複数文を対象にし,一般性のある意味解析法を明かにすることを目的とする. 本年度は,他条文を参照する表現の論理表現に関する分析,号参照と号とからなる条文に関する研究,条文における算術演算を表す表現の分析などを行った.他条文を参照する表現の論理表現に関しては,他条文を参照している国民年金法の各条文について,参照先の内容を論理表現に取り込む必要があるかないかを分析した.号参照と号とからなる条文に関しては,それらの複数の表現から論理表現を導く推論過程を形式化するとともに,この推論過程のうち,号参照表現を号の内容で置き換える過程をベトナムの法令およびその英訳に適用する実験を行った.前年度に行った日本語よりもよい結果であった.算術に関しては,複数文によって表現される場合も含め,算術式と関連させて言語表現のパターンを求めた.
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