研究概要 |
本研究の目的は,論理式を用いた計算論的機械学習システムを利用し,グレイコードに基く実数値と実数値関数の論理式表現を用いて,実数値データから機械学習方式を実装するとともに,その理論的な裏付けを行う.実数値データからの機械学習に対しては,統計学からアプローチが主であったが,本研究は計算論的学習からアプローチにより形式言語等の学習との接点を見出す.さらに機械学習を通じて,構成的な実解析学に対して新たな理論展開を探る.本年度は,機械学習システムとして,論理式を用いた計算論的学習において既に開発されているモデル推論システム(MIS)を利用してプロトタイプシステムを稼動可能とした.グレイコードを用いると,実数の近似値と誤差からなる組を一つの論理項で表現することが可能であるが,現実の「連続値データ」とは無限桁の小数ではなく,実験・観測によって得られる近似値と誤差の組であり,それは実験・観測が繰り返されることにより精度が増す.そこで,MISが用いている演繹的推論を「公理を,演繹したい定理に向かって精密にする」という行為と捉えた上で,精度の増加を演繹的推論に還元している.また,精密化と機械学習の関係について分析を進めた。MISは精密化を利用しているが,基礎としている機械学習のモデルが質問を許す学習であるが,実際の実数値データからの機械学習は正データまたは正負データからの一方向的な学習である.そこで,正データからの学習が可能であるために十分であるような精密化のもつ条件を,領域にによらない一般的な手続きを構成することで示した.この結果に基いて,上述のプロトタイプシステムを質問学習から一方向的な学習へ変更することを検討する.
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