研究概要 |
本研究の目的は,論理式を用いた計算論的機械学習システムを利用し,グレイコードに基く実数値と実数値関数の論理式表現を用いて,実数値データから機械学習方式を実装するとともに,その理論的な裏付けを行う.実数値データからの機械学習に対しては,統計学からアプローチが主であったが,本研究は計算論的学習からアプローチにより形式言語等の学習との接点を見出す.さらに機械学習を通じて,構成的な実解析学に対して新たな理論展開を探る. [連携研究者] 京都大学・人間・環境学研究科・准教授 立木秀樹 北九州大学・基盤教育センター・准教授 廣渡栄寿 昨年度考察した機械学習の手法は次の通りである:実数の近似値と誤差からなる組を論理項で表現し,それを用いて学習対象の関数の近似である公理(仮説)を演繹したい定理に向かって精密にする.本年度はこの手法を詳細に検討し,以下の設定のもとで基礎理論の構築を行った. 1.実数を,測定原理,すなわち近似値と誤差が測定の繰返しによって精度が増すデータと捉える. 2.機械学習の対象を「関数」よりも一般的な「図形(数学的には閉集合)」に設定する. 3.近似値と誤差を有理数を端点とする閉区間で表現し,さらにそれを論理項で表現する. 4.図形の近似表現をフラクタルアトラクターとし,さらに論理式で表現する. 5.学習対象とその近似表現の間の距離を導入し,学習のアルゴリズムと評価に用いる. この設定のもとで,自然数の帰納的関数の計算論的学習において提唱されている基本的な学習手続きと対照させながら,図形の学習手続きを構成し,分析を行った.一方で,図形に制限しない一般的な対象の族に位相を導入して,計算論的学習の手法を位相の面から分析する研究も行った.
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