研究概要 |
平成20年度は,特に,2色型色覚を有する人に焦点を絞り,色覚バリアフリーを実現する画像変換(色変換)アルゴリズムを開発した.2色型色覚を有する人は,眼の錐体細胞が2種類のみであり,多くの場合,赤と緑の区別がつきにくいという特徴をもつ.したがって,カラー画像を効果的に加工し,2色型色覚を有する人が見たときに色の弁別が容易になるような画像へと変換することが必要となる. 具体的には,色覚異常者の中でも比較的多いと言われる二色型第一,及び第二色覚特性(赤と緑などの弁別が困難)を持つ人を対象とし,混同色線理論に基づき,混同色に関連したコスト関数を構成し,ある種の最適化問題として捉え,それを解くことで色変換を実現する方法を開発した.実際に,開発した方法を弁別困難色を含む画像に適用し,その有効性をVienotらが提案している色覚モデルを利用し,確認した.更に,伊藤光学工業(株)社製の色弱模擬フィルタを用い,変換で得られた画像を目視し,その結果,Vienotらのモデルでの見え方と同様に,開発した方法によって画像中の弁別困難色の視認性が向上することを確認した.また,色変換が不必要な画像,つまり混同色の含まれない画像に対しては,提案手法が恒等変換となることも確認した.多様な画像への応用と提案手法の精緻化,画像に応じた最適パラメータ値の自動決定などが今後の課題として残るものの,今年度分の研究は比較的良好に実施されたと言える.
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