研究概要 |
本研究では,ラフ集合に基づく粒状性(granularity)と位相空間論が一般に、感性を伴う情報処理において一つの重要な役割を果たす、という観点に基づいて、人間の推論における感性の役割に関する基本的知見を獲得し、感性を伴う推論のシミュレーションの実現をめざすことを目的とする。本年度はまず、そもそも論理や推論における感性とは何なのか、に関して基礎的考察を行い,以下の結果を得た.まず,ラフ集合と粒状推論に基づく演繹・帰納・発想の三大推論の統一的取扱う方法を構成した.それはKripke式のモデルを粒状化して,上近似モデルと下近似モデルを生成する方法であり,怪しい推論は上近似モデルを活用することで説明できることが分かった.また,人間のコミュニケーションに出現する非妥当推論の列挙し,その類型化を行った.その結果,個々の演繹としては正しいが全体的には怪しい推論プロセス(「風が吹けば桶屋が儲かる」の類)を常に異なる焦点で粒度を上げ下げによって説明できることを明らかにした.また,その説明を,占いにおける推論例に適用し,アブダクションを利用した推論として定式化した.以上と並行して,次年度の準備として,Kripke式モデルに対する上・下近似モデルを構成するプログラムを作成した.これは様相論理の決定問題を解く手法であるろ過法を拡張した理論に基づいている.本プログラムはJAVAでされており,次年度,これを拡張して,感性推論,最終年には,信念形成が可能となるように拡張する準備が整った.
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