平成20年度は以下の研究を行った。 1、グラフ構造の圧縮に関する考察 昨年度は木構造の圧縮について考察したが、木構造の圧縮では目的とする生体構造の圧縮には不十分であるため、より一般的なグラフ構造の圧縮について検討を行った。グラフ構造を圧縮して文法を抽出するには、これまで研究してきたオイラー文字列に変換して文法圧縮を行う手法では困難であることが判明した。そこで、既存のグラフ圧縮に関する文献を調査した結果、webグラフなどの圧縮に使用されている方法が利用できそうであるとの感触を得た。しかし、それらの手法をそのまま適用したのでは文法規則などを抽出することができないので、規則の抽出を可能とするための修正方法について検討を行い、一部、実装を開始した。 2、無順序木の編集距離の近似 圧縮のためには構造データの比較も重要である。そこで、以前より行ってきた木構造の編集距離に関する研究を進展させた。具体的には高さ制約のある無順序木に対する編集距離に基づく最大共通部分木の近似問題に取り組んだ。そして、従来から知られていた近似精度を改善することに成功した。具体的には従来の2hという精度を1.5hに改善することに成功した(hは木の高さ)。また、無順序木の編集距離そのものの近似問題にも取り組み、高さ制約のある場合に定数近似が可能であることを示した。さらに、その手法を確率的な手法と組み合わせることにより(高さ制約のある無順序木の)編集距離のLl距離空間への埋め込み手法を開発した。
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