本研究では、事柄に対する知識を、一定の知識表現構造によって多面的に記述したレファレンスツール(知識辞典)の構築を目指す。平成20年度は昨年度行った電子百科事典の用語の説明文に対する知識メタデータ付与作業によって明らかになったいくつかの問題点の検討を行い、知識メタデータの改訂作業及び関連する検討を行った。 具体的には、モノ・コトの視点と動的・静的の視点で捉えた19の知識メタデータを用語の説明文に付与した際、モノ・コトの切り分けが困難であること、及び知識メタデータの項目名が対象とする用語の概念によって直感的に適合しないことが問題となった。前者の問題を受けて、知識メタデータ構造の再検討を行い、最終的に「外見」「構成・成分」「全体」「性質」「出来方」「変わり方」「機能」「用途・用法」「変遷」「上位概念」「下位概念」「対比」「等価の用語」「反対語」14の項目からなる知識メタデータに改訂した。この成果は知識を扱う上で有用な知見であり、現在論文としてまとめている。さらに、後者の問題を受けて、対象とする用語の概念を分類して知識メタデータ項目の意味の対応表を作成した。 このツールは、知識メタデータ付与に大いに役立つものと考えられる。また、電子百科事典の用語の説明文の傾向を、付与された知識メタデータ項目の種類によって分析し、「上位概念」「変遷」「構成・成分」が半分以上の事柄で使われていること、及び95%の用語が7個以下の知識メタデータ項目でしか説明していないことを明らかにした。これは、本研究が目的とする知識辞典の必要性を示唆する結果である。
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