平成19年度は、これまでに発表された「ニューロエコノミックス」に関する論文を網羅して、その特徴の分類を行った。その観点は「どのような経済場面におけるどのような事象について、どのような結果が得られているのか?」というものであった。 さらに、国内外の学会や研究会に参加して、ニューロエコノミックスに関わる実験を行っている研究者の報告を聞き、意見を交わした。これらの調査から、現時点で、経済事象に関わるfMRI実験では、主として「確率場面」および「現在と未来に関わる場面」での選択を迫られた場合、あるいはゲーム理論の実証場面での脳内活動の変化が注目されており、一方で、より一般的な経済事象に応用されるような実験はめぼしい成果を見せていないことが確かめられた。 特に、ラスベガスで開催されたASSC(意識の科学コンファレンス)では、多くの脳科学者および哲学者らと「fMRIで何が明らかとなるのか?」について議論を交わした。 これらの調査の過程で把握された従来の研究に対する分析法への問題提起として、ウィーンで開催されたMCPにおいて報告を行った。 また、上記の調査と並行して、確率場面での行動実験を行った。これらの実験結果の示すところと、脳内過程から得られている成果とがどのような関係にあるのか、が今後調査される。 行動実験の成果は、人工知能学会の研究会や進化経済学会等で報告を行った。
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