昨年度定式化した「図式とその断面によるパターン表現」という新概念を使って、これまで文字列に限られていたコルモゴロフ複雑性の概念を、より一般の対象の複雑性の概念に拡張した。これまで一般の対象は文字列に符号化してそのコルモゴロフ複雑性を測ればよいと思われてきたが、それで得られる複雑性の計量は、符号化を具体的に指定しなければ無意味である。通常、対象によってそれぞれあきらかに妥当な符号化があって、妥当な符号化問の違いは有限の情報量の違いにしか帰結しないためこの問題は見過ごされてきたが、文字列への符号化が容易に有限的に定義できないような一般の対象について、それらの問で共通の複雑性の概念を定義しようとすると、これが問題となる。そこで対象の表現を対象の入っている空間を特徴付ける写像に相対的に定義した。その表現に必要な写像の組み合わせの大きさによってデータの複雑性を定義することによって、その空間の構造にしたがって意味のある複雑性を測ることができる。またこの新しい情報計量のコルモゴロフ複雑性との関係を探り、上記の空間を特徴付ける写像として整数を特徴付ける写像に相対的にそれを定義したとき、コルモゴロフ複雑性と同値であることも証明した。これらの結果をプレプリントとして公表した。この定式化の意味するところをより深く探り、論文にまとめ雑誌投稿するため、執筆しつつ、講演などを通して内外の研究者の意見を求めた。また関連して、コンピュータビジョンにおけるエネルギー最適化のグラフカット手法を高階のエネルギーについても適用可能にするための手法を開発し、国際学会に投稿し採択された。
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