ショウジョウバエ神経芽細胞の不等分裂に関与するbrat遺伝子発現のコントロールにより、脳内に存在する概日ペースメーカー細胞からの安定培養株樹立をめざし、4項目の研究を行った。まず、mCD8に対する抗体を使用して、 mCD8を発現transgenic系統の脳内の神経が効率よく分離できるかを試した。氷冷PBS下で20匹の3齢幼虫の中枢神経系を取り出し、コラゲネース□で処理後にさらにディスパーゼ処理を行うことによって、ピペッティングのみによって神経細胞をマイルドに解離することができた。続いて抗mCD8抗体を用いた磁気ビーズ法により7-8割程度の解離神経細胞を分離することができた。これにより、任意の脳内の神経細胞を分離する手法が確立できた。第2段階として、 pdf-gal4:mCD8::GFP系統とbrat RNAi系統の交配により、腫瘍化して無隈分裂可能なペースメーカー細胞の分離を試みた。上記と同様の方法で分離を試みたが、得られた神経細胞は、野生型と比較してサイズが非常に小さく、また形態も不均一であった。腫瘍化との関連が考えられるが、メカニズムの詳細は明らかではない。第3段階として、分離した神経細胞からの発光リズム計測を行った。前年度は細胞が早期に死んでしまい、1振動しか観察できなかったため、本年度は培養液組成・添加物の検討を行った。 Schnider培地にN-2とインシュリンを添加することで、2振動までは観察できるようになったが、3振動目を安定に観察することは稀にしかできなかった。一方、第4項目として、磁気ビーズで分離した脳内神経細胞から安定培養株の樹立も目指した。通常のM3培地では2日ほどで細胞は死滅した。そこで、上記の培地内で培養すると、分離した細胞自体は1週間以上生存したが、細胞分裂は起きず、安定培養株は樹立できなかった。
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